アパート経営は必ず儲かるとは限らず、立地や借入状況などによって収益は大きく左右されます。本記事では、アパート経営の収支例や、利益を出すための7つのポイントを詳しく解説します。儲ける以外のアパート経営のメリットも紹介するので、アパートの経営を考えている人はぜひ参考にしてください。
目次
アパート経営の収支例
アパート経営の収支は、間取りや戸数、建築費、空室率などによって大きく変わります。ここでは、1K・8戸、2DK・10戸、3LDK・12戸の3つのケースを例に、具体的な収支モデルが示されています。1K・8戸の場合の収支例
まず1K・8戸の場合、建築費は5,800万円、家賃は1戸あたり月8万円です。満室であれば月の家賃収入は64万円、年間では768万円となります。支出は、ローン返済が月32万円(返済比率50%想定)、管理委託料や修繕費などが月12.8万円(経費率20%)、その他経費が月3万円で、合計47.8万円です。その結果、年間所得は(64万円-47.8万円)×12か月で194.4万円となります。
次に2DK・10戸の場合の収支例
次に2DK・10戸の場合、建築費は8,640万円、家賃は1戸あたり月10万円です。満室時の月収は100万円、年間では1,200万円です。支出はローン返済50万円、管理委託料など20万円、その他5万円で、合計75万円となります。よって年間所得は(100万円-75万円)×12か月で300万円です。
3LDK・12戸の場合の収支例
最後に3LDK・12戸では、建築費は1億9,200万円、家賃は1戸あたり月16万円です。満室時の月収は192万円、年間では2,304万円にのぼります。支出はローン返済96万円、管理委託料など38.4万円、その他6万円で、合計140.4万円です。その結果、年間所得は(192万円-140.4万円)×12か月で619.2万円となります。
アパート経営における収入
アパート経営における収入には、いくつかの種類があります。収入の主な種類
主なものは毎月入居者から支払われる家賃で、これが収入の大部分を占めます。そのほか、共用部分の維持や管理のために徴収する共益費・管理費、敷地内に駐車場がある場合の駐車場賃料も収入源となります。また、入居時に受け取る礼金や、契約更新時に支払われる更新料も収入の一部です。さらに、屋根に太陽光発電システムを設置して売電収入を得たり、敷地内に自動販売機を設置したりすることで、付随的な収入が発生するケースもあります。
アパート経営の収入の大部分は家賃収入
ただし、これらの中でも中心となるのはやはり家賃収入です。そのため、安定した収益を確保するには、できる限り空室を出さず、物件の稼働率を高く保つことが重要です。空室が発生すると、その期間の家賃収入が得られないだけでなく、次の入居者を募集するためのハウスクリーニング費用や仲介手数料などのコストも発生します。さらに、入居者確保のために家賃を引き下げなければならない場合もあり、長期的な収益に影響を与える可能性もあります。
このように、アパート経営では収入の内訳を理解するとともに、空室対策が非常に重要なポイントです。
アパート経営における支出
アパート経営では、さまざまな支出が発生します。大きく分けると、毎月または定期的に発生する費用、必要に応じて発生する費用、そして税金の3つがあります。定期的な支出
まず定期的にかかる費用としては、ローン返済費が挙げられます。借入額や返済期間に応じて、毎月一定額を返済しなければいけません。また、管理会社に運営を委託している場合は管理委託料が発生します。さらに、火災保険や地震保険などの保険料、共用部分の電気代や水道代といった水道光熱費も継続的な支出です。水道光熱費は建物規模によって異なりますが、年間で1戸あたり数千円から1万円程度が目安とされています。
必要に応じて発生する支出
次に、状況に応じて発生する費用もあります。退去時の原状回復や設備交換にかかる建物修繕費に加え、築15年前後を目安に外壁や屋根などの大規模修繕も必要になります。入居者を募集する際には仲介手数料や広告料がかかり、立ち退きが発生した場合には立ち退き料や解体費用が必要です。
各種税金
さらに、アパート経営では各種税金も負担しなければなりません。所得に応じて課税される所得税や住民税、固定資産評価額を基に算出される固定資産税や都市計画税、一定条件下で課される事業税などがあります。また、物件取得時には不動産取得税や登録免許税、相続時には相続税が発生します。
アパート経営におけるキャッシュフローとは
アパート経営で「儲かる」とは何かを考える際には、利益とキャッシュフローの違いを正しく理解しておくことが大切です。利益とは、家賃収入などの収入から経費や減価償却費を差し引いた会計上の金額を指します。一方でキャッシュフローとは、実際の収入から経費や借入金の返済額などを差し引いた後に手元に残るお金、つまり実質的な手取り額のことです。アパート経営で本当に「儲かった」といえるのは、キャッシュフローがプラスになっている状態を指します。
利益とキャッシュフローに差が生じる理由
利益とキャッシュフローに差が生じる主な理由は「減価償却費」と「借入金返済額」の存在です。減価償却費は建物の価値を毎年少しずつ減少させるという会計上の処理であり、実際にお金が出ていくわけではありません。しかし費用として計上されるため、利益を圧縮し、結果的に税金を抑える効果があります。
借入金の扱いについて
一方、借入金の返済は実際にお金が出ていく支出ですが、会計上は費用とはなりません。そのため、返済額が大きいと利益は出ていても手元資金が残らない、いわゆるキャッシュフローがマイナスになることもあります。たとえ立地の良い物件でも借入が過剰であれば儲からないのはこのためです。逆に、借入が少ない、あるいは完済している物件であれば、郊外や築古であってもキャッシュフローがプラスになるケースもあります。
アパート経営で安定して儲けるためには、借入を抑え、空室を減らし、キャッシュフローを常にプラスに保つことが重要です。
儲かる以外のアパート経営のメリット
アパート経営のメリットは、単に「儲かる」ことだけではありません。代表的な利点として、相続税対策になる点や、損益通算によって税負担を軽減できる点が挙げられます。これらは結果的に手元に残る資産を増やすことにつながるため、多くの方がアパート経営を選ぶ理由となっています。
相続税対策
まず相続税対策についてです。アパートを建てることで、相続財産の評価額を時価よりも下げることが可能です。更地のまま土地を所有している場合は、固定資産税評価額を基準に満額で課税されます。しかし、一定条件を満たす住宅が建っている土地や、賃貸用として利用されている土地は評価額が減額されます。
その結果、相続時の税負担を抑えることができます。実際に、2015年の相続税法改正で課税対象者が増えたことをきっかけに、貸家の着工戸数が一時的に増加しました。
家賃指数が下落傾向にある中でもアパート建築が進んだ背景には、収益性だけでなく相続対策という目的が大きく影響しているといえます。その後、金融機関による融資審査が厳格化されましたが、自己資金を十分に用意できる人にとっては、健全な経営を行いやすい環境とも考えられます。
家族に資産を残せる
次に、家族に資産を残せる点も大きな魅力です。アパートローンを組む際には、通常、団体信用生命保険に加入します。これは契約者が死亡や高度障害となった場合に、残りのローン返済が免除される仕組みです。そのため、万が一の際にも家族にはローンのない不動産と家賃収入が残り、生命保険のような役割を果たします。
長期的な資産形成と家族の生活保障を同時に実現できる点は、大きな安心材料といえるでしょう。
損益通算ができる
さらに、損益通算ができることも重要なメリットです。アパート経営が税務上赤字となった場合、その赤字分を給与所得など他の所得と相殺することが可能です。特に会社員の方は、確定申告によって所得税や住民税の還付を受けられるケースもあります。税務上の赤字は減価償却費などの影響によることも多く、必ずしも実際のキャッシュフローが悪いとは限りません。
このような税制上の仕組みを活用できる点も、アパート経営の大きなメリットといえるでしょう。
アパートで儲けるためのポイント
アパート経営で安定して儲けるためには、キャッシュフローを意識した具体的な対策が欠かせません。本章では、そのための7つの重要なポイントが示します。ハウスメーカー・建築プランの比較
まず第一に、ハウスメーカーや建築プランを十分に比較することです。アパートは30〜40年にわたり収益を生む資産となるため、最初の投資判断が将来を大きく左右します。各社で得意とする構造や工法、デザイン力、入居者募集力は異なるため、1社だけに絞らず複数社の提案を比較することが重要です。特に、収益シミュレーションの精度や合理性、実績の豊富さを見極めることが、儲かる物件づくりの第一歩となります。
将来を見据えた設計企画
第二に、将来の環境変化を見据えた設計企画が必要です。今後はファミリー世帯が減少し、単身世帯が増加すると予測されています。そのため、1Kや1LDK、2DKなど小規模間取りの需要が高まります。特に高齢単身世帯はニーズが高いにもかかわらず供給が不足している分野であり、見守りシステムなどを導入することで差別化が可能です。
需要の変化を先取りした企画が空室リスクの低減につながります。
十分な自己資金の用意
第三に、十分な自己資金を用意することです。理想は建築費の30〜50%程度とされ、借入額を抑えることで返済負担が軽減され、キャッシュフローが安定します。過剰融資は経営を圧迫するため「多く借りられる銀行」を探すのではなく、厳しい審査を通る健全な計画を目指すことが重要です。
借入金返済額を減価償却費以内に設定する
第四に、借入金返済額を減価償却費以内に設定し、借入期間を耐用年数以内にすることです。減価償却費は支出を伴わない会計上の費用ですが、借入返済は実際の支出です。返済額が減価償却費を超えるとキャッシュフローが悪化します。また、耐用年数を超えても返済が続くと、減価償却が終了して税負担が増え、経営が急激に苦しくなる恐れがあります。
適切な管理方法の選択
第五に、適切な管理方式を選ぶことです。管理委託やパススルー型サブリースは収益性が比較的高い一方、家賃保証型サブリースは保証の代わりに収益性が低く、将来的な賃料減額リスクもあります。安心感だけで選ばず、収益性を重視して判断することが大切です。
法人設立の検討
第六に、法人設立の検討です。法人所有にすることで税率面のメリットや経費計上範囲の広さといった利点があります。特に高所得者の場合、個人より法人の方が税務上有利になるケースも多く、節税対策として活用されています。
立地を最優先に考える
第七に、所有している土地に固執せず、立地を最優先に考えることです。空室率や家賃水準を左右する最大の要因は立地です。条件が悪い場合は売却して好立地へ買い替える選択肢も検討すべきです。買換え特例を活用すれば税負担を抑えながら移行できる可能性もあります。