親や親族からアパートを相続することになったとき、そのまま経営を続けるべきか、それとも思い切って売却してしまうべきか、多くの人が頭を悩ませます。アパート経営には家賃収入という魅力がある一方で、管理の手間や維持費といった負担もともなうからです。後悔しない選択をするために、まずは冷静に判断するための基準を確認しましょう。
アパートの経営権を受け継ぐ際によく見られる状況
アパートのオーナーという立場を引き継ぐ背景には、いくつかの代表的な例が存在します。まずは、一般的にどのようなケースで経営権のバトンタッチが行われているのか、具体的な中身を見ていきましょう。遺産としてアパートを受け継ぐケース
多く見られるのが、親が亡くなった後に相続人としてアパートを譲り受けるケースです。この場合は、遺言書の内容や家族間での話し合いによって、誰が物件を引き継ぐかが決まります。建物や土地といった資産だけではなく、残っているローンや現在の入居者との契約内容、さらには管理会社との付き合いまで、すべてをそのまま引き継ぎます。
生前贈与によって計画的に譲り受けるケース
生きている間に、計画を立ててアパートを譲り受ける方法もあります。いわゆる「生前贈与」と呼ばれるもので、あらかじめ時期を決めて準備を進められるのが大きな利点です。また、早い段階から資産を移すことで、将来的な税金の負担を抑える対策として選ばれることも多い手法です。
家族信託や法人化を活用して運用を任されるケース
最近増えているのが、家族信託という仕組みを使って、所有権は親に残したまま管理や運用の権限だけを子どもに移すパターンです。万が一、親の判断力が低下した際も、スムーズに賃貸経営を続けられます。なお、アパート経営を事業として法人化している場合は、会社の役員に就任することで経営権を引き継ぎます。
引き継いだアパートをどのように運用していくべきか
アパートの新しいオーナーになった後、今のままの状態を維持するのか、それとも新しい工夫を取り入れるのかによって、将来得られる利益や手間も大きく変わります。ここでは、3つの主な方向性について、それぞれの特徴をご紹介します。現在の状態でそのまま賃貸経営を続けていく
一番シンプルで選ばれやすいのが、今の入居者や管理体制を変えずに、そのまま大家業を継続する方法です。これまでどおりに家賃収入を得るスタイルなので、生活のリズムを大きく変えずに運用を始められます。日常の清掃やトラブル対応などは管理会社に任せてしまえば、自分自身で動く手間はそれほどかかりません。物件に手を加えて収益の向上を目指す
引き継いだアパートが古くなっていたり、空室が目立っていたりする場合は、思い切って中身を見直すのもひとつの手です。たとえば、部屋の内装を現代風にリフォームしたり、人気の設備を新しく導入したりすることで、物件の価値を高められます。魅力が増せば、家賃を上げても新しい入居者が見つかりやすくなり、結果として毎月の利益が増加につながる可能性もあります。
一定の期間だけ運用してから手放すことを検討する
すぐに売却するのではなく、数年間は家賃収入を得てから、タイミングを見計らって売る考え方もあります。将来的に建物が古くなって維持が難しくなることを見越して、出口戦略を描いておく方法です。周辺の開発状況や不動産価格の動きを見ながら、有利な時期に現金化を目指すスタイルです。
所有し続けるか手放すかを決めるための大切なポイント
アパートをもち続けるべきか、それとも売却して現金にするべきか、その答えを出すのは簡単ではありません。そこで、冷静に決断を下すために確認しておくべき4つのチェックポイントを整理しました。毎月の収支がプラスになっているかを厳しくチェックする
なによりも先に確認すべきなのは、お金の動きです。毎月の家賃収入から、管理会社への手数料や固定資産税、共有部分の電気代、そして将来のための修繕積立金を差し引いて、手元にいくら残るかを計算してみてください。もし計算した結果が赤字であったり、ほとんど利益が出なかったりする場合は、保有し続けることが逆に負担になってしまいます。
建物が古くなることで発生するリスクを見極める
現時点では順調でも、5年後や10年後の状況を想像することが欠かせません。建物は年数が経てば必ず傷むうえ、屋根や外壁の大規模な工事には数百万円単位の費用が必要になります。また、近くに新しいアパートが建って入居者が流れてしまうリスクも考えなければなりません。将来的にかかるコストや空室のリスクが自分の手に負えないと感じるのであれば、建物の価値がまだ高いうちに売却に踏み切るのが賢明です。
自分の仕事や生活スタイルに合っているかを考える
不動産経営はビジネスであるため、自身のライフスタイルとの相性も重要です。本業がとても忙しくてアパートのことにまったく時間が割けない方や遠方に住んでいて様子を見に行けない方は、管理を負担に感じてしまうかもしれません。また、毎月のコツコツとした収入よりも、まとまった現金を手に入れて、ほかの投資や生活資金に充てたいと考えている場合は、売却の方がメリットは大きいといえます。
第三者の専門家に意見を聞いて客観的に判断する
悩んでいると、どうしても考えが偏ってしまうことがあるため、不動産のプロや税金の専門家に相談してみるのが一番の近道です。不動産会社は現在の市場価値を教えてくれるほか、税理士は相続税や譲渡税の計算をしてくれます。複数の専門家から客観的なアドバイスをもらうことで、自分では気づかなかったメリットやデメリットが見えてくるはずです。納得のいく答えを出すために、周りの力も上手に借りてみてください。