アパート経営による相続税対策の仕組み|節税効果を最大化するための基礎知識

公開日:2026/02/18
相続税

アパート経営は、運営次第で相続税や所得税、贈与税などの節税につながる可能性があります。ただし、節税だけを目的にすると赤字経営に陥る恐れもあるため注意が必要です。そこで本記事では、アパート経営による税金対策の方法と押さえておきたいポイントについて分かりやすく解説します。

アパート経営による相続税対策

アパート経営は、相続税対策として有効な手段の一つとされています。

不動産購入そのものが節税につながる

まず、不動産を購入すること自体が節税につながる可能性があります。現金はそのままの金額が相続税評価額となりますが、土地や建物といった不動産は、実勢価格よりも低い相続税評価額で算定されるのが一般的です。

そのため、たとえば1億円の現金を保有したまま相続が発生した場合は1億円に対して課税されます。しかし、生前にその資金で土地とアパートを購入していれば、評価額を圧縮でき、結果として相続税の負担軽減が期待できます

評価減の仕組みの活用

さらに、アパートのような賃貸用不動産には評価減の仕組みが設けられています。土地については「貸家建付地」として評価され、自用地よりも低い評価額となります。

建物についても、第三者に貸している場合には借家権割合(全国一律30%)を反映した評価減が適用されるのです。土地の評価には借地権割合(地域ごとに30~90%)や、相続時点での入居率を示す賃貸割合も関係し、これらを踏まえて評価額が算出されます。入居率が高いほど評価減の効果も大きくなります。

小規模宅地等の特例

加えて「小規模宅地等の特例」を活用する方法もあります。この制度は、一定の要件を満たす土地について、限度面積まで相続税評価額を大幅に減額できるものです。

アパート経営に用いられている土地は「貸付事業用宅地等」に該当し、200平方メートルまでの部分について評価額を50%減額することが可能です。

アパート経営による贈与税対策

アパート経営では、贈与税の制度を活用することで、将来の相続税対策につなげることが可能です。

相続時精算課税制度

代表的な方法の一つが「相続時精算課税制度」の利用です。この制度は、成人した子や孫に対して生前に財産を贈与する場合、累計2,500万円までは贈与税が非課税となる仕組みです。ただし、贈与者が亡くなった際には、その贈与財産を相続財産に組み戻して相続税を計算するため、直接的に相続税額が減るわけではありません。

それでも、アパートのような収益物件を生前に子へ贈与しておくことで、子が賃料収入を得られるようになります。その結果、将来発生する相続税の納税資金をあらかじめ準備できるというメリットがあります。

特に、建物部分のみを子に贈与する方法は実務上よく活用されており、納税資金の確保を目的とした「納税対策」という位置づけです。

暦年贈与

また「暦年贈与」を活用する方法もあります。これは、年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない制度です。

アパート経営で得た賃料の一部を毎年子へ贈与することで、親の財産の増加を抑え、結果として将来の相続税負担を軽減する効果が期待できます。同時に、子側も資金を積み立てられるため、節税対策と納税対策の両面で有効な手法といえるでしょう。

アパート経営による所得税・住民税対策

アパート経営では、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。

損益通算

代表的な方法が「損益通算」です。不動産所得は「収入金額-必要経費」で算出され、赤字が出た場合には給与所得など他の所得と合算して全体の所得を圧縮可能です。

これにより課税所得が下がり、所得税や住民税の節税につながります。必要経費には、固定資産税や都市計画税などの公租公課、火災保険料、修繕費、管理委託料、仲介手数料、借入金利子、減価償却費などが含まれます。

特に減価償却費は実際の支出を伴わずに経費計上できるため、所得を抑えられることでしょう。ただし、ローンの元本返済は経費にならない点に注意が必要です。

繰越控除

また、初年度などに生じた赤字が控除しきれない場合は、最長3年間繰り越して控除できる「繰越控除」も活用できます。一般的にアパート経営は毎年赤字になるものではなく、家賃収入の2~4割程度が利益となるケースが多いです。

しかし、物件取得初年度や大規模修繕、解体を行った年などは一時的に赤字になることがあります。たとえば年収900万円の給与所得者が初年度に100万円の赤字を出した場合、損益通算によって所得が圧縮され、所得税と住民税を合わせて約30万円の節税効果が生じる例もあります。

ただし、この効果は初年度特有の事情によるもので、毎年続くわけではありません。

法人化

さらに、所得が高い場合は法人化によって税率を抑える方法もあります。個人の課税所得が900万円を超えると法人税率の方が低くなるケースがあり、法人化が有利になることがあります。

また、10室以上の規模で青色申告を行えば、親族に支払う給与を青色事業専従者給与として経費計上できるため、さらなる節税が可能です。

アパート経営で節税を行う際の注意点

アパート経営で節税を考える際は、いくつかの注意点があります。まず、所得税や住民税の節税を目的にあえて赤字経営にするのは本末転倒です。

不動産所得が赤字になれば損益通算により税負担を軽減できますが、あくまで意図せず赤字が出そうな場合に制度を活用するのが望ましい姿勢といえます。

また、節税効果は長く続くとは限りません。取得初年度は不動産取得税や登録免許税などの費用がかさみ赤字になりやすいものの、年数が経過すると減価償却費が徐々に減少し、やがて計上できなくなります。

その結果、赤字は出にくくなり、節税効果も次第に薄れていきます。さらに、アパート経営の主な税金対策は相続税対策であり、所得税や住民税の節税はあくまで副次的な効果です。

過度に節税を追い求めるのではなく、安定した利益を確保することを第一に考え、そのうえで必要に応じて制度を活用する姿勢が重要です。

まとめ

アパート経営は、単なる家賃収入の確保にとどまらず、相続税をはじめとする各種税金への対策としても大きな可能性を秘めています。不動産ならではの評価減や小規模宅地等の特例、生前贈与の活用、損益通算や法人化といった制度を正しく理解し、自身の状況に合わせて選択することが重要です。ただし、節税はあくまで結果であり、目的は安定した収益の確保と資産の健全な承継にあります。制度の仕組みを踏まえた堅実な運営こそが、節税効果を最大化し、次世代へ安心して資産を引き継ぐための最善策といえるでしょう。

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